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京都芸術センター Co-program(コープログラム)2025 採択事業発表!
- 投稿日
- 2025年1月20日
- 更新日
- 2025年1月20日
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- 募集情報
京都芸術センターは、創造の核となるアーティストや芸術団体との連携を強化し、その活動を支援することで新たな価値を創造する公募事業「Co-program」を実施しています。
2025年度は、国内外から計86件の企画提案をいただきました。有識者の方々のご助言を踏まえ、1次審査(書類審査)及び2次審査(面談/プレゼンテーションと質疑応答)を行った結果、以下の5件が採択となりましたので発表いたします。
カテゴリーA:共同制作(公演事業)
次代を担うことを期待されるアーティストや芸術団体が主体となり、京都芸術センターと協働することで、新しい芸術表現の探求と活動のステップアップにつながる事業。
採択事業(応募35件中2件、採択率5.7%)
①千代その子・米澤百奈『Bambino! 0才からのパフォーミングアート』
(実施予定時期:2025年7月~8月開催予定)
②ぺぺぺの会『悲円』(実施予定時期:2026年1月~2月)
カテゴリーB:共同開催(展覧会事業)
アーティストやキュレーターによる展覧会プランで、京都芸術センターと協働することでプロジェクトの実現を目指す事業。特に新進のアーティストを紹介するものや新たな展開を試みる企画。
採択事業(応募28件中2件、採択率7.1%)
①李静文「影の残影」(実施予定時期:2025年7月~8月)
②水木塁「包摂と/ And Inclusivity 展」(実施予定時期:2025年11月~12月)
カテゴリーC:共同実験(リサーチ、トーク、ワークショップ等)
アーティストや芸術団体、研究者等が主体となり、京都芸術センターと協働して新たなテーマの探求やリサーチ、既存のジャンルの枠に囚われない実験を試みる事業。
採択事業(応募28件中1件、採択率3.5%)
①小㞍健太(SandD)「Research for ‘The Self in season’」
【総評】
Co-program2025 カテゴリーA「共同制作」(公演事業)審査評
カテゴリーAには計35件、昨年同様に高水準のプランが多数寄せられました。海外からの応募も増え、当館でまだ十分に紹介できていないジャンルからの応募もあり、「共同制作」を謳う本プログラムはどのようにあるべきか、改めて考えさせられました。
今回2次審査にお進みいただいたプランは、京都芸術センターが予算と施設提供以上に有意の貢献ができ、発展に寄与できると資料から想像できたものです。面談を経て、そのうち2件の企画を採択しました。
「Bambino! 0才からのパフォーミングアート」は、あかちゃんを主な対象としたダンス公演の創作プロジェクトであり、本申請ではタイのアーティストとの国際協同制作を予定しています。あかちゃんと観る作品の取り組みは日本でも開拓途上であるといえますが、タイでも同様であり、本件事業にコミットすることはひとつの団体の支援を超えた意義が見込まれます。
一方、「ペペペの会」は、企画のユニークさが突出していました。新NISA批評とチェーホフという一見してアンマッチな取り合わせですが、観客からのフィードバックを交えてプロジェクトを成熟させていくことで、ともすれば、時代にあわせた”びっくり箱“のようになりがちな上演芸術を、より積極的な議論の場へとズラしていこうとする目的意識に、今日性と京都芸術センターの協働の必然性を感じました。
どちらのプランも、いまの京都/日本における漂う不安を敏感にかぎ取り、異なる意味で未来を志向するものと読み取りました。私たちも、企画者やアーティスト各位の意気に応え、観客のみなさんとともに25年目の冒険に出発したいと考えています。
最後に、採択できなかった申請のなかにも、国際的な情勢、地域の歴史、身体的ギャップ、社会的な関係によって、アーティストにもたらされる様々な影響とその昇華について、示唆を含むものが多数あったことを、感謝とともに付け加えさせていただきます。異なる機会での出会い直しに期待しています。
Co-program2025 カテゴリーB「共同開催」(展覧会事業)審査評
カテゴリーBには昨年度と同数の28件の応募がありました。今年も、申請者の個々人の問題意識をもとに誠実に考え抜かれた申請が多数寄せられ、皆様の申請に目を通しながら様々なことを考えました。特に今年は、新たな展覧会の形式を作り出すことを目論む意欲的な申請が目につきました。展覧会という場の可能性を拡張することを意気込む申請からは、京都芸術センターのギャラリーにはまだ掘り起こされていない可能性があることを教えていただいたような気がします。また、申請いただいた方の活動拠点に目を向けると、海外からの応募が増えた一方で、京都を拠点とする若手作家からの応募が少数にとどまりました。この点については、芸術系大学が多数存する京都という場で若手アーティストの活動支援を主目的に活動している私たち自身の課題として、受け止めたいと思います。
さて、それぞれに魅力的な申請に対する審査は大変に難しいものでしたが、今年は水木塁氏の申請プラン「包摂と/ And Inclusivity 展」と、李静文氏の申請プラン「影の残影」の2件を採択することにいたしました。
水木氏のプランは、「包摂」という今日的なテーマを、都市における動植物を通して考えるというユニークなものです。水木氏を含む4名の出品作家のラインナップや展示プランは、今日的な課題であるがゆえに、すでに様々に論じられているテーマに対して、新たな視点を提供してくれそうだという強い期待感を与えてくれるものでした。
一方、李氏のプランは、デジタル社会における「リアル」のあり方を問うものです。このように記せば、凡庸なテーマを掲げた展覧会だと思われるかもしれません。しかし李氏がキュレーターとして選んだ3名の作家たちは、それぞれに詩情やユーモアやロマンティシズムを備えており、AIが人類の知能を超えようとする現代における人の固有の感性を繊細に掬い取ることができるように感じられました。
惜しくも採択できなかった申請のなかにも、今日的な問題をしっかりと受け止め、それに誠実に向かい合おうとする表現や、自身のこれまでのキャリアを見つめ直し自身の表現を発展させようとする熱意に根差した申請があり、大いに触発されました。
Co-program2025 カテゴリーC「共同実験」(リサーチ、トーク、ワークショップ等)審査評
カテゴリーCには23件の応募がありました。開設25周年を迎える京都芸術センターの2025年度の事業予定を鑑み、採択件数を1件に減らさざるを得なかったこともあり、例年以上に難しい審査となりました。
カテゴリーCは、「実験的な試みを可能にすること」を重視してきた京都芸術センターの理念を体現する枠でもあります。「実験性」を問うがゆえに、単純な意味での「企画の完成度」だけではない多様な観点からの審査を迫られることとなり、それぞれに異なる魅力やポテンシャルを秘めた多彩な提案のなかから一つを選考するのは、非常に困難な作業でした。
その中で採択された「Research for ‘The Self in season’」は、内でも外でもない中間領域である「縁側」をはじめ、可塑性の高い日本建築の空間構成を参照しながら、身体表現によって舞台空間をデザインする手法の開拓や、観客が主体性を感じられる舞台空間の構築などを目指すリサーチプロジェクトです。予定されている公演の「前」と「後」でリサーチを行うという提案で、継続的な展開が見込まれるばかりでなく、応募者の次なるステップへのマイルストーンとなる企画であること、また、京都芸術センターが関与することによってリサーチの充実度が増すことへの期待感から採択しました。
残念ながら採択に至らなかったプランの中にも、混迷の度合いを増す今日の社会情勢を見据え、新たな表現の胚胎となりうる探求や交流の創出を期待できる提案が数多くみられました。応募いただいたすべての方に感謝申し上げます。