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Exhibition “INEVITABLE NOMADISM”
- Genre
- 美術
- Category
- 展覧会
- Date and time
- Thu, May 25, 2017 - Sun, Jul 2, 2017
- place
- Kyoto Art Center ギャラリー北・南、和室「明倫」
- Fees & Others
- 無料
- Business Segments
- 主催事業
わたしたちの祖先はなぜ、自らの身体を過酷な環境においてまでも危険な拡散を試みたのだろうか
京都芸術センターは今年度より、アーティストとの連携を強化して創作・発表の場を広げるべくKAC TRIAL PROJECT / Co-programを始動。昨年12月に、カテゴリーA「共同制作」(公演事業)、カテゴリーB「共同開催」(展覧会事業)、カテゴリーC「共同実験」(リサーチ、レクチャー、ワークショップ等)、カテゴリーD「KAC セレクション」(舞台芸術の分野での発表に限定した支援)の4つの枠組みの中でプランを募集しました。
カテゴリーB(展覧会事業)では、京都を拠点に活動する黒宮菜菜のプラン『のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ』を選定し、ギャラリー北・南そして和室「明倫」と場所を拡張しながら、若手作家3名によるグループ展を行います。
人間はなぜ創作するのか。本展覧会は、黒宮の素朴でありかつ根源的な問いを基に形作られています。約10万年前にアフリカ大陸を出発した人類は、長い時をかけて4万8000年前頃までに現在のアジア地域まで拡散しました。人類が遊動してゆく中で生まれた祭祀や儀式といった活動が、現代に生きる私たちの創造と繋がっているとも考えられます。生存とは異なる次元で、表現することへの純粋な欲求を、私たち人類はもともと持ち得ていたのではないでしょうか。
今回出展する3名の作家は、人間の「身体」についてそれぞれ異なるアプローチで活動しています。黒宮は人間の輪郭を描きながらも、滲みや暈かしを用いることで、むしろ身体そのものの存在を曖昧にしてゆく絵画表現を展開しています。シンメトリーの画面が宗教的な要素を連想させると同時に、明滅する液晶画面上のイメージのようでもあり、観る者の感覚を強かに揺さぶります。二藤は、自身が直接世界に触れることを軸とした、新たな彫刻表現の可能性を追及しています。手触りや質量といった人や物質が存在することへの問いが、一見ユーモラスに、かつ切実に私たちの目前に投げかけられます。自らの身体
を確固たる表現媒体とする若木は、世界各地のマラソンを走破することを実践の一つとしています。その記録映像には、作家なのかアスリートなのかといった議論が最初から吹き飛ぶような、祝祭性を帯びたしなやかな魅力があります。
彼らの創作に共通するのは、目の前の現実を各々の方法で咀嚼し、確かめようとする実直な姿勢です。そしてそれは、かつて遊動を始めた過去の人類にとっても、同じことだったのかもしれません。この瞬間が、10万年前から続いている今日だということを改めて実感する機会に、どうぞご期待ください。
- 日時
-
2017年5月25日 (木) – 2017年7月2日 (日)
10:00-20:00 - 会場
- 京都芸術センター ギャラリー北・南、和室「明倫」
- 企画概要
- わたしたちの祖先はなぜ、自らの身体を過酷な環境においてまでも危険な拡散を試みたのだろうか。
約10万年前にアフリカを出発した人類は4万8000年前頃からアジアにまで広がった。最先端の人類進化学研究を担う海部陽介は、人類のアジア拡散ルートについて、ヒマラヤ山脈を挟んで南北に別れた人類が、まるでアジア全域に大回廊を築くかのように西から東へと横断し、1万年後東アジアで再会したという仮説を提唱している。さらに、東アジアで再び出会った人類は、今度は草舟を作って海に乗り出し、人力渡航で日本まで辿り着いたとも考えているのだ。
また、人類は長い拡散と遊動生活のなかで、身体を飾る装飾具、死者を弔う埋葬や火葬といった儀式、洞窟の壁の描写など、多くの創造活動の痕跡を残している。氷河期の過酷な環境における純粋な生存への欲望とは別の次元で、なにか身体を媒介とした表現活動への根源的な渇望があったのではないだろうか。そして、その身体表現への渇望は、地球上のあらゆる場所へと拡散せざるを得なかった人類の遊動することへの欲望と通低していると思われるのだ。
本展覧会では黒宮菜菜、二藤建人、若木くるみが原初的な欲望である「遊動」をテーマに作品を発表する。すべての人々にとって、人類の「のっぴきならない」欲望の根幹を探る旅となることを期待したい。
- 出展作家
- 黒宮菜菜、二藤建人、若木くるみ
- 関連企画
- アーティスト・トーク
日時: 5月25日(木)18:30-20:00
会場:ギャラリー北・南、和室「明倫」を巡回 ※ギャラリー南に集合
進行:平芳幸浩(京都工芸繊維大学美術工芸資料館准教授)
※入場無料・事前申込不要レセプション・パーティ
日時: 5月25日(木)20:00-21:30
会場:フリースペース
※入場無料・事前申込不要レクチャー 「のっぴきならない探検家に聞きたい!」
日時:6月17日(土) 19:30-21:00 ※開始時間が変更となりました
会場:ミーティングルーム2
登壇:関野吉晴(探検家・医師・武蔵野美術大学教授)
料金:無料(要事前申込)※定員に達したため受付終了
黒宮菜菜
1980年東京都生まれ、京都市在住。「滲み」や「暈かし」といった描写痕跡を不鮮明にする絵画技法を用いて、身体の輪郭の曖昧さや希薄さをテーマに絵を描く。油彩絵画の制作に加え、近年では、画仙紙や水墨画用紙といった和紙素材にも着目し、染料を描画材としながら独特なマチエールを有した絵を制作する。主な展覧会に『黒宮菜菜展 夜—朧げな際』(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、京都、2016)、『極並佑・黒宮菜菜・三好彩 展』(渋谷ヒカリエ 8/CUBE 1,2,3、東京、2012)、『黒宮菜菜展-流彩の幻景-』(INAXギャラリー2、東京、2010)など。「京都市芸術新人賞」(2017)、「トーキョーワンダーウォール賞」(2014)。
二藤建人
1986年埼玉県生まれ、同県在住。接触や運動の新たなバリエーションを提案しながら、人類史上淘汰・忘却された事象の数々を意識した「生」への思想的アプローチを作品化している。自身が一枚布の雑巾となり、世界各地の街を拭き上げながら全身で都市を知覚し、その身に蓄積させていく「雑巾男」シリーズや、他者の重みを真下から両足で踏みしめる装置としての作品「誰かの重さを踏みしめる」などがある。主な展覧会に『凍てつく雲のふわふわ』(gallery N 神田社宅 、東京、2017)、『NEW VISION SAITAMA Ⅴ 迫り出す身体』(埼玉県立近代美術館、埼玉、2016)、「あいちトリエンナーレ2016」(岡崎会場、愛知、2016)など。
若木くるみ
1985年北海道生まれ、京都市在住。後頭部を用いて他人のアイデンティティや物語を自分の身体に取り入れる作品を制作する。また、強靭な身体と「走る」というシンプルな行為を用い、人間の可能性とコミュニケーションの可能性を拡大する活動を行う。主な走歴に「環花東超級マラソン333km 女子優勝」(台湾、2013)、「スパルタスロン246km 日本人女子1位 世界女子9位」(ギリシャ、2016)など。主な展覧会に、『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展』(アーツ千代田3331、東京、2017)、「轟」(川崎市岡本太郎美術館、神奈川、2015)、「さっぽろアートステージ2014」(北海道、2014)、『若木くるみの制作道場』(坂本善三美術館、熊本、2013)など。主なパフォーマンスに「全刈りなのにハンガリーに行く」(ハンガリー、2007)など。
主催
「のっぴきならない遊動」展実行委員会、京都芸術センター
問合せ先
京都芸術センター
TEL:075-213-1000
FAX:075-213-1004
E-mail:info@kac.or.jp
WEB予約
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